喫煙者は、上腕血圧が正常血圧であっても中心血圧が高く、循環器疾患のリスクとなっていることが明らかとなった。獨協医科大学循環器内科の南順一氏が、10月9日から札幌市で開催されている第31回日本高血圧学会総会で発表した。
中心血圧高値は高血圧性臓器障害の要因といわれており、喫煙者の中心血圧が高かったことは、上腕部の血圧が正常範囲であっても循環器疾患が進展している可能性があり、注意が必要といえそうだ。
南氏らは、健常男性において、喫煙がメタボリックシンドロームやAI(Augumentation index)、中心血圧に及ぼす影響を評価した。対象は、同院の1泊2日人間ドック受診者のうち、130/85mmHg以下の正常血圧であった健常男性443人(平均年齢52.9歳)。これを、非喫煙者、過去喫煙者、現喫煙者(20本/日以下)、現喫煙者(20本/日以上)の4群に分類し検討した。
上腕血圧はカフ・オシロメトリック法で、中心血圧は橈骨動脈脈波から収縮期後方血圧として算出した。測定は喫煙者においても少なくとも6時間禁煙後に行った。メタボリックシンドロームの判定はNCEP-ATPIII(ウエスト周囲径のカットオフ値は85cm)で行った。
患者背景は4群においてほとんど変わらなかったが、非喫煙群と比較して喫煙3群が有意に高かったのがメタボリックシンドロームの割合で、非喫煙群で3.4%であったのに対し、過去喫煙群で9.1%、現喫煙群(20本/日以下)で12.4%、現喫煙群(20本/日以上)で23.2%と有意に高かった。喫煙本数が増えるにつれてAIも高かった。
各血圧項目については、上腕血圧が4群において差がなかったのに対し、AIは非喫煙群に対し、過去喫煙群は高い傾向にあり、現喫煙群2群は有意に高かった。中心血圧も、非喫煙群に対し、現喫煙群2群は有意に高く、過去喫煙群でも非喫煙群に対して有意差が見られた。
また、過去喫煙群を詳細に解析した結果、禁煙後5年未満に対し、5年以上経過した場合に中心血圧が有意に低下することも明らかとなり、禁煙後5年未満はまだメタボリックシンドロームや中心血圧上昇によって循環器疾患リスクとなっていること、5年以上になるとリスクが有意に軽減していくと考えられた。