新型(H1N1豚)インフルエンザのタミフル耐性ウイルスがヒトからヒトへ感染した例が初めて確認され、米フィラデルフィアで開催された米国感染症学会(IDSA)で報告された。同学会で報告された別の研究では、H1N1ウイルスに感染した小児が、最初に症状が現れてから約2週間を過ぎてもまだウイルスを排出することが判明している。
専門家らによると、新型インフルエンザは春夏と変わりなくほとんどが軽症であるものの、現在急速に拡大している。これまで、H1N1ウイルスのほとんどの株(strains)には抗ウイルス薬アマンタジン(商品名:シンメトレル)に対する耐性が認められていたが、オセルタミビル(同:タミフル)およびザナミビル(同:リレンザ)が有効であったことから、この2薬剤が広く治療および予防に使用されていた。
しかし今年(2009年)6~7月、ノースカロライナ州でサマーキャンプの参加者およびスタッフ65人が新型インフルエンザに罹患してタミフル治療を受け、他の参加者600人が予防のためにタミフルを使用したところ、タミフル使用開始後に発症した女性2人(同じキャビンを利用)がタミフル耐性ウイルスに感染していることが判明。発症時期やウイルスに認められた遺伝子変異から、このウイルスが一方の女性からもう一人に感染した可能性が高いという。
研究著者でノースカロライナ州公衆衛生部疫学調査部員のNatalie Janine Dailey博士は「予防目的で健康な人にタミフルを用いると耐性リスクを高めることになり、耐性ウイルスが拡がるとタミフルが効かなくなる」と述べ、予防には抗ウイルス薬ではなくワクチンを使用するのが望ましいと指摘している。ただし、入院患者や高リスク患者には抗ウイルス薬を直ちに投与すべきとのこと。
第2の研究では、ペンシルベニア州の26の小学校で、H1N1陽性とされた児童および家庭での接触者を対象にウイルスの排出パターンを調べた結果、排出期間の中央値は6日間で、最短1日、最長13日であることが判明。9歳以上の小児でも同様の結果であり、成人よりも長いことがわかった。この結果は、季節性インフルエンザに関する過去の研究と一致していると、報告者である米国疾病管理予防センター(CDC)疫学調査部員のAchuyt Bhattarai博士は述べている。この結果および今後のデータは、感染した児童生徒がいつ登校を許可されるかを決定する助けとなる。
同会議では、H1N1ワクチンの供給状況の問題についても取り上げられた。米国保健社会福祉省(HHS)のBruce Gellin博士は、ウイルスの培養に鶏卵を用いる現在の生産システムに問題があるとし、大いに改善の余地があると指摘している。生産量のばらつきなどの問題は解決されてきているが、今後も生産量を増やし、ラインを短縮するために調整を続ける必要があると同氏は述べている。