効果、ウソだとは/売り切れで悲鳴
記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社
【2007年1月21日】
「あるある大事典」ねつ造:効果、ウソだとは/売り切れで悲鳴(その1)
◇「朝晩食べた」 視聴者、怒りの声
それはうそだった。フジテレビ系列で7日放映の「発掘!あるある大事典2」が紹介した「納豆ダイエット」。番組を制作した関西テレビが20日会見し、効果の根拠としたデータや専門家の発言に、多数のでっちあげが含まれていたことを明らかにした。番組放映後、スーパーでは売り切れが相次ぎ、メーカーは増産に追われて新聞におわび広告を出した。「毎日食べていたのに」。消費者からは怒りの声が上がった。
東京都江東区の大手スーパーで買い物していた団体職員の女性(41)は番組のねつ造を知り「今日も買いに来たんです。信じていたのに」と絶句した。以前は月に数回食べる程度だったが、番組で「1日2パックを毎日朝晩食べ続けて」と聞き、その通りにしていた。「でも体重が減らないからおかしいと思っていた」
午後6時半ごろ納豆が完売した横浜市中区のスーパーで、最後の5パックをまとめ買いした同市磯子区の会社役員の男性(65)。放送を見た妻と娘が「毎日2パック食べなければいけない」と言い出し、会社帰りに毎日買いに行かされた。「いい迷惑。テレビ局はいいかげんにしてほしい」。怒りは収まらない。
同市中区の30代の主婦は放送後に突然、納豆が買えなくなり、3店ほど探し回った。「『1品だけを食べ続けると効果がある』というのは変だと思っていたが、やっぱり……」と話した。
番組を見て「納豆ダイエット」を続けていた東京都江東区の主婦(59)は「2週間で効果が出るという説明だったので、頑張って食べていた」という。手ごろな値段だったのでやりやすかった面もある。「以前に放映されたチョコレートも寒天も試してみたがやせず、他の方法までもうそに見えてくる」と不信を募らせる。
◇追及され、ねつ造認め--社長謝罪
「報道機関でもある放送局として、視聴者の信頼を裏切ることになり、深く反省している」。千草宗一郎社長は会見で語り、岡林可典常務取締役、山本紘専務取締役ら幹部とともに頭を下げた。
ねつ造は、被験者の架空の検査データを作成したり、米国の教授のコメントを勝手に作るなど悪質なものだったが、千草社長は「事実と異なる部分があった」と当初、繰り返すだけで、「ねつ造」と認めようとしなかった。記者団から問題の認識について再三、追及を受けた結果、会見最後になって「ねつ造だと思っている」と認めた。番組内容のチェック体制についても、最初は「若干の不備」と話すだけだった。
社員の処分について「厳正に対応する」(千草社長)という言葉とは裏腹に、ねつ造が起きた原因などについて「調査している」「判明している事実はすべて語った」と答えるだけで、詳しい内容を明らかにしなかった。
ねつ造の発覚は、週刊誌から12日と18日に取材を受けたことがきっかけ。記者会見後には、週刊誌記者の追及を受けて、週刊誌からの質問状を元に会見での発表資料を作成したことを認めるなど、後手後手の対応が目立った。
◇事前に構成知らず--コメントの教授
番組で「DHEA(ホルモンの一種)を増やすのに必要なイソフラボンの量は納豆2パック分に相当」「血液中のイソフラボンを一定レベルに保つには、朝と晩に分けて食べるほうが効果的」などとコメントした昭和女子大栄養科学系講座の中津川研一教授。毎日新聞の取材に「番組の構成は事前に知らされておらず、一般的な効能などを自分が知る範囲でコメントした」と説明する。
だが、これに基づき行われた実験結果は架空のものだったと今回判明。中津川教授は「放送を見て、予想通りの結果が出たと思っていたが、ねつ造と知り驚いている。放送前にチェックする時間はなかった。本来はそうしなければならないのだろうが、私も含め怠っていた」と話す。
また、納豆の発酵過程で増えるポリアミンに「基礎代謝を高める効果がある」とコメントした千葉大大学院薬学研究院の五十嵐一衛教授は「納豆は健康によいと考えているので協力したが、こうした問題があるなら今後は出演できない」と困惑する。 |