GIスズキクリニック GIニュース~健康に関わりのある情報~

  GIスズキクリニック TEL 022-293-0211   
FAX 022-293-0212   
    HOME < GIニュース < がんとの闘い終盤戦 京都大教授・福島雅典氏    
 
院長メッセージ
診療科目
消化器内科
診療時間
アクセス
リンク
 
HOME
 
GIニュース
 

GIニュース  ~健康に関わりのある情報~

 
 

がんとの闘い終盤戦 京都大教授・福島雅典氏

記事:毎日新聞社
提供:毎日新聞社

【2007年2月26日】

ニュースUP:核心インタビュー がんとの闘い終盤戦----京都大教授・福島雅典氏

 ◇京都支局・奥野敦史
 ◇標準治療実施が重要

 日本人の死因のトップ、約3割を占めるがん。それだけに健康食品から民間療法までさまざまな“治療法”が喧伝(けんでん)され、それにほんろうされる患者たちがいる。現代医学で最も「理にかなった」がん治療とは何か。京都大がこのほど設立した「がんセンター」の中心メンバー、福島雅典教授に聞いた。

 ----がんの制圧についてですが、目指すところは?

 ◆がんの発生率と死亡率の低下、患者さんの生存率と終末期医療の満足度の向上が目指すゴール。この4指標は常に正確に評価し、背景を把握しなければなりません。

 例えば、米国の男性の肺がんは発生率、死亡率とも80年代をピークに25%以上低下した。日本でも胃がんは70年代に比べ発生率、死亡率とも半減した。画期的治療法が出来たおかげではなく肺がんは禁煙の浸透、胃がんは食生活改善の結果です。逆にたばこ対策が遅れた日本では肺がんは減らず、肉中心の食事が増え大腸がんが急増しています。

 ----がんの基本的な治療法は既に確立した?

 ◆そう言っていいでしょう。がんとの闘いは既に終盤戦。侮れないが、恐れおののく病気ではないのです。

 闘うための柱は三つあります。まず、がんを起こすリスクを評価し、除去すること。たばこをやめる、肉食中心の食生活を見直すなどです。次に検診の普及、それから標準治療の実施となります。

 リスク除去や早期診断には市民の意識が深くかかわります。例えばたばこを野放しにしては、がん死亡率は下がりません。また米国で主要ながん(胃、肺、大腸、前立腺、子宮、乳)の死亡率が下がったのは、市民の健康管理意識が上がり、予防、早期発見、早期治療が普及したことが大きい。男性は前立腺がんのPSA検査、女性は乳がんのマンモグラフィー検査は定期的に受けてほしい。検診技術は驚くほど進歩し、ほとんどすべてのがんを短時間で見つけることが出来ます。「自分で自分の体をチェックする」という意識が、市民に浸透するか否かで、がん制圧の結果に大きな差が出ます。

 見方を変えれば、現在の医療技術でがん制圧は十分可能ということです。がんのメカニズムを解明してもがん制圧は出来ない。基礎研究に費用を使うより、検診やたばこ対策を進めた方が効果は高い。社会全体で、何に資金と人材を投入すべきか、見極めるべきです。がんを制圧出来るかどうかは、その社会の市民の知恵次第とも言えます。

 ----標準治療とは?

 ◆多くの費用と労力をかけて臨床試験と治療成績評価を繰り返し、有効性と安全性が確立した、その時点で最高成績の治療法のことです。手術で取れるがんは取るのが基本で、不可能な場合は抗がん剤を使いますが、その方法も標準治療で決まっています。

 ----医師によって治療法が異なるのは珍しくありません。

 ◆がんと診断された患者さんに医師がすべきことは標準治療です。効果も安全性も科学的に実証されていない治療法は患者さんの命を縮める。最先端と言えば聞こえはいいが、科学的根拠のない治療は医師の「思い込み」でしょう。また「がんの治療法は個々人で異なる」と言う意見もありますが、あくまで標準治療の個別化であるべきで、大筋の治療法は変わりません。

 ----患者は何をすべきですか?

 ◆標準治療は、米政府と米国立がん研究所が作った世界最大のがん情報データベース「PDQ」にすべて掲載され、インターネットで公開されています。私たちは03年にその日本語版を完成させ、がん情報サイト(http://cancerinfo.tri-kobe.org/)で公開しています。現在も本家に合わせて毎月改訂しており、医学教材としても極めて強力です。

 医療従事者も患者さんもまずPDQを読んでほしい。そして患者さんは標準治療でない治療をしようとする医師に「なぜ?」と尋ねてほしい。それが自分の命を守ると同時に、医療の自己決定、健全な患者・医師関係の構築につながります。

 ----医療従事者側の改革は?

 ◆従来、大学病院は縦割り組織でした。それを現代の科学に合わせた形に変えねばならない。キーワードはまず「チーム医療」。各科の医師、薬剤師、看護師、ヘルパーなどすべての医療従事者が連携し、共同でベストの診療をする。現在の抗がん剤治療は9割が外来だから、開業医の先生との連携も不可欠。緩和ケアチームも必須です。

 もう一つのキーワードは「シームレス」です。講座や大学間の壁をなくし、近くの病院に行けば、切れ目なく最適な治療に到達出来る仕組みを作る。それには全国の病院の連携と、各病院の治療成績の公開が必要。そうして「どの病院に行けばいいの?」という悩みも、「系列でない病院は紹介できない」というばかな事態もなくしていきます。

 京都大病院がんセンターはこれらの取り組みの実践の場となります。患者さんは科学的知識を吸収し、自覚的に健康管理をする。医療従事者は常に科学的にベストの医療を提供するシステムを作る。それは遠くない未来に実現するはずです。

……………………………………………………………………………

 ■人物略歴

 ◇ふくしま・まさのり

 1948年生まれ。抗がん剤治療の専門家で、愛知県がんセンター病院で22年間、がん患者の治療にあたった。00年、京都大教授に就任。医薬品の有効性評価、適正使用、副作用被害防止のシステムを科学的に研究する薬剤疫学の分野を立ち上げた。現在、京都大病院探索医療センター検証部教授、外来化学療法部長。


 
 
 
 
  ページTOPへ  
GIスズキクリニック
宮城県仙台市若林区新寺2丁目2−11 
新寺211ビル4階 
TEL 022-293-0211 FAX 022-293-0212
Copyright 2006-2011 GI Suzuki Clinic. All Rights Reserved.