早期の肺癌(がん)と診断された後に禁煙することで、5年生存オッズが2倍になることが、英国のメタアナリシス(メタ分析)研究で示され、英国医師会誌「BMJ」オンライン版に1月21日掲載された。
肺癌に対する最良の予防法は全くたばこを吸わないか、吸っていれば禁煙することであり、禁煙によって生涯に肺癌と診断される率が激減する。しかし、診断後の禁煙が予後にどれほど影響を及ぼすかはまだ明確にされていないことから、英バーミンガム大学医学・歯学部のAmanda Parsons氏らは、診断後の禁煙の影響を調べた10件の観察研究のデータを検討した。
メタアナリシスを用いてこれらの知見をまとめた結果、禁煙した場合の生存チャンスは禁煙しなかった場合に比べてどの時点でも約2倍であった。また、喫煙を継続した早期肺癌患者の5年生存率は29~33%に過ぎなかったが、禁煙した患者では63~70%であった。これは心肺(機能)の改善によるものではなく、腫瘍再発の可能性が低減したことによるという。
Parsons氏は「全例早期癌で、外科手術、化学療法、もしくは放射線療法のいずれかを受けており、この結果はこのような肺癌患者群にのみ当てはまるものである。進行癌患者での禁煙の有益性は不明である」という。今回の分析対象となったのはすべて観察研究であったため、禁煙が実際に死亡減少をもたらしたかどうかはまだ確かでない。それでもなお、この知見は肺癌と診断された患者に禁煙カウンセリングをルーチンで行うべきかどうかという問題に一石を投じるものである。
米国肺協会(ALA)のNorman Edelman博士は「この結果は非常に劇的である。重要なのは、これが早期肺癌であるという点である」という。早期肺癌の治癒率は50~60%になりうるが、早期段階で診断される肺癌はごく少数であり(Parson氏らによればおそらく20%)、肺癌と診断された1年後の生存率は3分の1未満である。
Edelman氏は「ALAでは皆に禁煙を勧めている。禁煙するのに遅すぎるということはない。70歳であっても恩恵を得られるという十分なエビデンス(科学的根拠)がある」と述べている。